うしろすがたのしぐれてゆくか

愛するフレンチブルドッグと昨日と今日と明日と旅と。

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 はじめて、スクリーンの中で動く彼を見たときは「おお、やっと会えたよ、アレクセイ!」という感じだった。まさに。
「アレクセイと泉」という映画を観たのは、今月はじめの、5月にしてはやけに蒸し暑かった日。
 上映当時私たちは日本にいなかったから、いつかぜったい観なくちゃと思いながらずいぶんと時間が経っていた。
 
 舞台はベラルーシのブジシチェ村。チェルノブイリ事故によって汚染された大地に住み続ける、アレクセイという名の青年と55人の老人たちの物語。
 ほくほくのジャガイモ。鮮やかに赤く熟したリンゴ。森に生えているきのこ。映像があまりにもきれいだから思わず「美味しそう」と思う。だけどそれは一瞬。
「あ。でも、このリンゴは放射能に汚染されているんだ」
 背中がぞくっとする。
 きのうとまったく変わらない景色なのに、きのうとはまったく違ってしまった世界なんて信じられるだろうか。

 ところで。この映画館は10年以上ぶりくらいだったんだけど、改装されて入り口脇にめっちゃいい感じのカフェが出来ていた。わたしたちは開場前にそこでビールを一杯ずつ飲むことにきめた。外に置かれたテーブルがふたつ。犬を連れた人もいた。
 線路脇の、電車の音がガタガタいう感じだとか、ときどき目の前を通る人達の中央線の住民っぽさだとかについて話しながら。上映時間を待ちながら。初夏の乾いた陽射しがとても気持ち良かった。こういうひとときがやっぱり楽しい。
 ついつい「昼からビール」の誘惑に負けて飲んじゃったもんだから、上映中にトイレに行きたくなったらどうしようなんて、いらない心配をする羽目になってしまったけれど。
 
 監督の本橋成一さんは写真家でもあり、映像がとても美しい。景色が。色が。
 よく「言いたいことをそのまま書く小説家はいない」というが、この映画も放射能は怖いとか原発がよくないとか、そういう直接的な映像はない。きれいで淡々とした毎日の風景の中だからこそ、愕然とする瞬間があるのだと思う。
 そしてこれは救いの無い映画ではない。タイトルがあらわしているように、泉が救いになっている。
 放射能がまったく検知されなかった泉。
 ひとびとはことあるごとに泉の周りに集まるのだ。

 それにしても、見ているだけですっとするっていうか、心が洗われるようなひとってほんとうにいるんだね。まるで、透明できれいな色をした石を思いがけず手渡された感じ。
 ってことで、アレクセイに感謝。
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2008.05.14 21:30 | 本とか作家とか仕事とか | トラックバック(0) | コメント(-) |

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